エキセントリック少年団の日常(2)

PIXELIMGL0893_TP_V.jpg




ある休日の午後、私はA君の家に遊びに来ていた。

といっても特に何する訳でもなく、逆に何もする事がないから遊びに来ているのだ。
予定のない休日は、私はほぼA君といた。

ただ、その日がいつもと少し違うのは、その空間にY君も遊びに来ているということである。

Y君は例のごとくA君がいつの間にか仲良くなっていた一人で、これまた独特のキャラを持っていた。
私達三人は同じ部屋の空間に居ながら、特に絡むことなくゴロゴロとそれぞれが漫画を読んだりゲームをしたりしていた。

友達の力は凄いとたまに感じるのが、ただ漫画を読むだけなのに一人で部屋で読む場合と、そこに友達もいて一人で読む場合では何かが違うというか、いつでも話しかけられるということもあり、ちょっとした安心感を得ながら読めたのは私だけだろうか。

一言も話さずにそういう効果が得られるなんて、友達は究極の心理カウンセラーかも知れない。
これはいくら高性能AIにもちょっと無理な芸当だろう。
心を許した仲とはそういうものであり、私もその領域のカウンセラーになりたいものだ、なーんて考えるのはここから20年以上経ってからの話。

「おい、Y」

少年三人がまったりとした時間を過ごしていると、突然A君が口を開いた。

「何?」

漫画を読みながら、Y君が答える。

A君 「もし、朝起きて自分がぬになってたらどうする?」

Y君 「は?  何?」

A君 「朝起きてぬになってたらどうする?」

Y君 「え、なんて? 何になってたら?」

A君 「“ぬ”だよ“ぬ”! 平仮名の“ぬ”!」

(なんだそりゃ…)
二人の会話が全部聞こえている私は、心の中で突っ込んでいた。

何でそんなことが分からないんだとばかりに、語気強く言ったA君に対し、Y君は普通に涼しい真顔で、

「あぁ、なーんだ。平仮名の“ぬ”か」

と言いながら、あごに手を当て、20~30秒ほど真剣に悩み始めた。

(いやいや、何で成り立ってるんだよ…)
私は口を挟まない。

「うーん、そうだなぁ。それってもう絶対に元に戻れないの?」

というY君の質問に対し、A君が戻れないと答えると

「いやぁ、それは始めはショックだろうけど、もう諦めて“ぬ”として生きていくんじゃないか」

真剣に答えたY君に対して、本当にどうでも良さそうに

「ふーん」

と、A君は返した。

私は、鼻から空気が漏れる程度に笑った。

そうしてまた三人は、何事も無かったかの様にまったりとした時間に戻るのであった…。