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A君と私(9)

私が幼い頃、夢中になってウルトラマンや仮面ライダーなんかを見ていた。
しかもそれは続編続編で、今も変わらずに子供たちを夢中にさせている。
ある意味最強の長寿番組だ。

当時の記憶で印象に残っていることがある。
ある日テレビで仮面ライダーを見ていると、隣にいた兄から

「正義とか悪とかっていうのは人が勝手に言っているだけで、あいつら(悪の組織)からしたら、仮面ライダーが悪だから一生懸命戦っているんだ」

という様なことを言われて、子供ながらに子供に何てことを言うんだと微妙なショックを受けたのを今でも覚えている。

余談だが、漫画ゴルゴ・13(サーティーン)の作者さいとう・たかを先生も
「善と悪なんて結局人が決めたものだから、そのどちらでもない人物を描きたかった」
と言っていて、実際その漫画は大ヒットしている。

確かに善と悪なんて本人の考え方次第で、私にとってA君はウルトラマンであり仮面ライダーだった。

一般的に子供は、大人に怒られるのが嫌だから悪いことをしない。
ところがA君は、大人が怒るからこそ悪いことをするのだ。

本当に楽しそうに大人を手玉に取る少年時代のA君を間近で見ていて、最初の頃は面倒臭かったのだが、どんなにピンチの時でもニヤリと笑いながら余裕でやり過ごすところは正直ちょっと格好良かった。

大人に怒鳴りつけられて、私がうなだれながらふと横を見ると、そこには自信満々の表情で何かしでかそうとしているA君がいる。
それを見た途端私も安心して、何があっても怖くなかった。

面倒臭いと同時に、これ以上頼もしい存在も他にいない。本当に不思議だ。

そんなA君がある日を境に何かを悟ってしまい、良い意味で性格が変わってしまった。

まだ10歳前後のことである。
そんな年齢の少年が短期間でこれだけ考え方が変わる、というのを私は目の前で実際に見たことになる。

そう、人は気付きさえあればいくらでも変われるのだ。

前にも書いたが、A君の場合は人との接し方という部分でかなりの変化があった。

ある種の違和感さえ感じる程である。

馬鹿にされたりすると、例え対峙する相手が自分より大きな相手でも、心も折ってしまうほどのことが出来た。
その独特の超自己中心的エゴの部分が消えたと言うか、まず他人にキレたり手を上げることが一切なくなった。

迷惑は掛けても最低限のルールは守るという様な、急に協調性のある人になっていた。

相変わらずユーモアもあるし悪戯もするが、以前のA君とは明らかに違う。

一緒に居て楽しいことに変わりはないのだが、それからしばらく経って変化後のA君の方に慣れてきた頃、今度は私に予期せぬ心境の変化が起こり始めた。

普通に人付き合いが出来て、以前ならキレて暴れていた様なことでも怒らなくなったA君を隣で見ているうちに、何故か私の方がやきもきというか、段々動揺する様になってしまったのだ。

滅茶苦茶なことをするA君が、滅茶苦茶なことをしなくなってから初めて理解した。

A君が以前していたことや狂気じみた部分、実はそれは全部私が望んでおり、本当は私がそれをしたかったんだということ。

実はA君は、私の心の体現者だったのだ…。

A君と私(完)へ続く   


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